2015年7月18日土曜日

岩日北線(2) 現地の状況1


リメイク_リバイバル_アーカイブス
この記事は1997年2月に取材されたものです

幻の鉄道建設公団AB線
岩日北線


(2)現地の状況その1




では錦町から六日市まで計画線ぞいにたどってみる事にしよう。まず錦町駅から。錦町は前述のとおり、第3セクターの錦川鉄道錦川清流線である。この清流線のホーム端の車止めから見えるトンネルが未開業区間の始点の広瀬トンネルである。全長は1.7Kmあり、宇佐川沿いに迂回する国道187号に対してトンネルで一気に反対側の出市へと抜けている。何の事は無いトンネルだが良く見ると、信号ケーブルのようなものが通っている。「こんな開業準備工事が!」と一瞬思ったが、後で出市側から見ると近くに変圧トランスのようなボックスがありケーブルは近くの電柱へとつながっている。なるほど山間に電柱を立てるより安上がりだ。(しかしすさまじくデカい共同溝だ。)

錦町は第3セクター転換された錦川鉄道の終点である。

車止めの先に早速、未成トンネルが見える。

広瀬トンネルは電線の通り道として利用されていた。


出市に出た岩日北線は大野川沿いに最短距離で六日市側へ抜ける国道187号に対して国道434号とともに宇佐川沿いを上って須川地区から全長4.6Kmの六日市トンネルで六日市へ抜けている。錦町の宇佐川沿いの地区がルート選定の際に要請したのか、それとも勾配の関係からか、若干、遠回りをしている。

国道187号を錦町側から走って来ると国道434号との分かれ目付近で突如として山間から高架橋が出てくる。ここが出市駅の予定地付近である。近くの道を上って行くと、ホームの土台部分が完成している出市駅を見る事ができる。公団の工事はここまでで、以後のホーム上構造物、取り付け部の階段、駅舎などは事業者か地元の負担となる。したがって、築堤上にある他の周防深川、下須川、高根口の3駅はホーム土台等の「ここが駅」と特定できる構造物は無い。あいにくの曇り空だったが、山と山を高架とトンネルで次々に貫いている路盤を見ていると自転車でカッ飛ばしたくなってしまう。一見頑丈そうに見える橋も、良く見ると竣功以来、長い間管理者がいないまま放置されていたからか、欄干が至る所で朽ちて外れているなど、危険な個所が見受けられたので、よりかかたりして万一、落ちてしまったりしたら、公団も清算事業団も補償をしてくれないのでご注意願いたい。

出市駅付近の高架橋。

高架駅はホームの構体もセットで作られている
AB線独特の高い高架位置にある駅である。


さて宇佐川沿いにもう少し上ってみる事にしよう。深竜寺トンネルを抜けたあたりに周防深川駅があるはずだが、どうも辺りからは確認出来なかった。もしかしたら写真の位置ではないかもしれないがいちおうこの付近という事にしておく。ここで面白いのは、路盤が斜面沿いを通っているため、元からあった道が路盤をオーバークロスするように作られている。この道路部分も公団の建設のようだった。ちなみに写真の左にはお寺があるのだが、工事の際、一部を切り取られたのか、この寺のコンクリート壁に完成年を示す公団の刻印を見つけた。先の道路のように建設にあたって影響を受けるインフラも公団が作っているようだが、お寺の土台とは恐れ入った。

ところで、この周防深川駅予定地付近には雙津峡温泉があり、そちらへ向かう観光客も多いことから錦町としても何とかこの路盤を生かせないかと考えているようである。錦町駅前から途切れる事無く続いている路盤を見るとバスを走らせても良さそうな気がするのだが、ここまでの道路がキチンと整備されている現状を考えるとなにもこの路盤を改修させてまで走らせるメリットは無いように思える。むしろ遊歩道的な物の方が良いのか。しかし遊歩道やサイクリングロードとして整備するにも、高架部分は腐った手すりを交換しなければだし、長いトンネルは照明が必要だろう。金をかけて整備しても利用にあたって料金を取る訳にはいかないし、第一温泉に行くような客がここまで徒歩や自転車でくるのか。難しい。

周防深川駅付近の道路のオーバークロス橋

譲渡へ向けての調査か
国鉄清算事業団と思われる姿が見えた




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